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王道が当たる条件

こんにちは! 河東遊民です。

今日は『王道が当たる条件』という創作に関するエッセイを書きましょう。

前回の記事(王道は危険)のつづきです。

まず、王道とはなにか、ということを定義したほうがよろしいでしょうね。質問箱で答えるには文字数が足らないので、こういうときこそブログの出番です。王道というのは、定番のネタ、定番の展開、定番の設定を使った作品のことですね。それらを使えば、それなりに面白いものになります。読んでいる人に安心感を与えますし、広範囲の人に受け入れられやすいものなので、当たったときに大きいのです。つまり、序盤から引き込まれる展開とか、感情移入しやすいキャラクターとか、後半はしっかり盛り上がるとかですね。邪道は、その反対です。

どんな作品も、完全に王道なものにはなりません。どれだけ王道を狙っても、どこかしらに新奇性があります。爆発的に売れる作品は、王道8:邪道2くらいの配分ではないかと考えます。このあたりは感覚的なものです。なんのデータもありません。小説を読んで、どれくらい王道かを計測することは不可能でしょう。

さて、本題です。王道と邪道の配分が8:2くらいの作品が当たる条件について書きましょう。それは『宣伝が十分にされる場合』です。王道の作品は大当たりを狙えるので、多くの人がつくります。すると、外側からは、どれもこれも似たようなものに見えてしまう危険性があるのです。もちろん、個々を見れば全然違いますし、オリジナリティもあるのです。しかし、8:2の2の部分で差異を出そうとしているので、多くの人には同じに見えてしまうというわけです。それでは、似ているものがたくさんある状況では何が勝敗を分けるのかというと、それは宣伝の量です。王道は大衆に広く受けることを目的としていますから、とにかく広告を打って人々に周知させることが重要です。そういうわけで、宣伝を打てないところから出た王道の作品は、よほどの幸運がない限り当たらないでしょう。

小説の話に限りません。映画館を考えてみてください。王道の作品、つまりハリウッドの作品が放映されるとします。基本的にハリウッドでつくられる作品は、どれも似たようなプロット構成になっています。もちろん設定は違いますが、どこでどうプロットを動かすか、みたいなことがすでに決まっているのですね。例外はタランティーノくらいではないでしょうか。日本で興行収入を伸ばすときには、必ず宣伝を大量に打ちます。全国の映画館で見られるようにします。これが、メジャーレーベルで王道の本を出すときと同じだと考えてください。

逆に、棚があまり取れていないマイナーレーベルから王道の本を出すと、どうなるでしょうか。またしても映画の比喩を使いましょう。映画館の数が、つまりはレーベルの棚の数と同じです。あなたのつくる映画が、全国7カ所でしか放映されないとしましょう。東京、大阪、名古屋、福岡、北海道、仙台、広島の県庁所在地があるところだけです。あなたは、ハリウッドと似たような作品で勝負をしますか? それとも、もうちょっとマニアックな作品で勝負しますか? 全国7カ所で放映されるならまだ良いです。実際には単館公開のときだってあるでしょう。

僕の考えでは、マイナーレーベルは、マニアックなもので勝負するしかないのです。宣伝にお金をかけられませんから、口コミが頼りです。もちろん大衆には受けません。むしろ、大衆に受ける作品をバカにしているような人に受けます。こういうのが本来の映画なんだよね、とか言いたがる人に受けるのです。目指すのはハリウッドではなくて、たとえば園子温とかだと思うのです(いまは園子温も随分と有名になりましたが……)。

マイナー(邪道)でも、ちゃんと売ればそれなりのビジネスにはなります。爆発的な大ヒットは無理です。王道の作品『君の名は。』が興行収入250億円らしいですが、園子温は当たった映画でも1億円とか2億円とかです。『秒速5センチメートル』だって1億円くらいです。多くの人は、この額だけを見て『君の名は。』みたいな王道の作品を持ってこい、と言うわけです。しかし、王道の作品が勝つのは、宣伝を大量に打てるときだけです。『君の名は。』は宣伝を大量に打てたから売れたのです。宣伝を打てないときは、他の宣伝を打つ王道の作品に負けます。宣伝を打てないマイナーなレーベルは、まず興行収入1億、2億といった小規模な(超王道の作品と比べたら小規模な)ヒットを狙うほうが良い……というのが僕の考えですね。

稀に、宣伝がなくとも、王道の作品で大ヒットを打つ人もいます。王道の作品のはずなのに、新しさを感じる、というケースですね。いわゆる天才です。まあ、非常に例外的なケースです。凡人は、コツコツと小さな当たりを狙ったほうがよろしいと思います。

マイナーレーベルにはマイナーの強みがあります。そこを武器にしていったほうがよろしいかと……。こつこつ小さな当たりを引いていれば、そのうち公開される映画館も増えていくのです。『言の葉の庭』の上映館数が23で、『君の名は。』が300館なのです。

最初から王道の作品で大ヒットを狙う危険性が、少しはわかってもらえたでしょうか。最初のうちは競争相手の少ないマイナージャンルで、ぎりぎりビジネスになるところを狙って、そこで小さな成功を積み重ねていくのが、凡人の成功する道だと思います。

あと、もちろん邪道すぎてもダメです。それは単なるカルトですから。王道8:邪道2の配分を、もう少し邪道に振り分けるというイメージです。

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